8.192026
「教育費いくら貯めれば安心?」の答えは、総額じゃなく“現金のタイミング”にあった
「子どもの教育費って、結局いくら準備すれば安心なんだろう?」
小学生の子ども2人を育てながら、FP事務所で事務職として働く私にとって、これは日常的でありつつも深いテーマです。平日はほぼワンオペで仕事と子育てを回しながら、我が家の家計とも向き合う毎日を送っています。
日々、お金のデータやご相談に触れる中で実感するのは、教育費を「総額」だけで捉えていると、実際の場面で足元をすくわれるということです。
教育費の本当の怖さは「ピーク時の現金準備」にある
文部科学省の調査(※1)によると、学習費総額は公立中学校で年間約54万円、公立高校で約60万円。公立中学の塾費用は平均約23万円とされています。しかし、これはあくまで「平均」です。受験学年になれば夏期講習や模試費用が膨らみ、実際の負担感はさらに増します。
そして、最も見落とされがちなのが「進路が確定する前に動く現金」です。
高校・大学受験ともに、第一志望の結果が出る前に滑り止め校の入学手続きを行うケースが少なくありません。大学の入学料は平均で約24万円(※2)。合格を保持するために納めるこの費用は、最終的に進学しなくても戻ってこないことがほとんどです。複数校を併願すれば、それだけで数十万円単位の現金が「進学先以外」に消えていくことになります。
💡 つまり必要な視点とは?
「総額でいくらかかるか」ではなく、「何歳のタイミングで、手元にいくらの現金(キャッシュ)が必要か」という資金繰りの視点です。
「今を犠牲にする貯蓄」は本当に正解か?
「将来のために、今は徹底して節約すべきだ」という意見もあります。子どもが望む進路を諦めさせないためには、一理あります。
ですが、お金は貯め直せても、「子どもが小学生である時間」は二度と買い戻せません。
中高生になれば部活や塾、友人関係が優先され、家族で過ごす時間は劇的に減ります。「教育費の準備」と「今しかできない家族の体験」は、トレードオフ(二者択一)にするべきではありません。
もちろん、「今の思い出づくり」を言い訳に無計画にお使い込みをしては本末転倒です。だからこそ大切なのは、「将来必要な現金を逆算してブロックし、残ったお金は『今を豊かにするために使い切る』」という設計です。予備費として口座に眠らせておくのではなく、「体験費」として予算化することで、後ろめたさなく家族の時間を楽しむことができます。
「お母さんの余白」は、家計を守るための不可欠なコスト
もう一つ、子育て家計の設計から排除されがちなのが「母親自身に使うお金」です。
仕事、家事、ワンオペでの子育て。忙殺される日々の中で、自分のカフェ代や美容代を「罪悪感」とともに削ってしまうお母さんは少なくありません。
しかし、母親のメンタルヘルスの破綻は、家庭の運用そのものを停滞させます。たまの休息や自分のための自己投資は、単なる「ご褒美」や「無駄遣い」ではなく、家庭というチームを健全に稼働させ続けるための「メンテナンス費(必要経費)」です。
「貯める」から「タイムラインを設計する」へ
教育費に唯一無二の正解はありません。
公立か私立か、塾はいつからか、自宅通学か一人暮らしか。進路によって必要な金額も、ピークの時期も全く異なります。
だからこそ、「〇〇〇万円貯めれば安全」という根拠のない目標数字を追いかけるのではなく、「我が家の時間軸(タイムライン)」に必要資金を並べて見える化することがスタートです。
- いつ、どんな現金(受験料・納付金・学費)が必要かを見える化する
- 将来の不足分を埋めるための月々の積立額を確定させる
- 残った予算で「今の家族の体験」と「自分を整える費用」を計画的に使う
将来の選択肢を守る備えも、今この瞬間の家族の笑顔も、自分自身の心のゆとりも。どれか一つを犠牲にするのではなく、すべてを家計の中に正しく位置付ける「設計」こそが、本当の安心につながると信じています。
※1:文部科学省「令和3年度子供の学習費調査」
※2:文部科学省「私立大学等の令和5年度入学者に係る初年度生徒等納付金平均額」等を参考に作成







